新型コロナが日本社会に影響を及ぼすようになってから約半年。
まだ、コロナ禍は収まっていませんが、ここまでの状況について振り返っておきましょう。
私がコロナ禍を念頭とした投稿をしたのは、以下が、はじめです。
既に、遠い記憶となりつつありますが、観光は、コロナ禍以前から、いくつか失速の傾向が出ていました。インバウンドも伸び率が低下し前年割れギリギリとなっていましたし、国内需要についても景気の失速は明確に数値で示されていました。
そこにダメ押しのようにコロナ禍となったのですから、実のところは、この時点で観光の市場展望は、かなり厳しい状況となっていました。
企業戦略において、市場の縮小期に取るべき選択肢は2つ。1つは、市場縮小の中でも「ともかく生き延びて」、縮小後の世界において市場を寡占化することで残存者利益を得るということです。ただ、これが出来るのは、ごく一部の体力のある企業に限定されます。そのため、残存を目指していても、市場が厳しくなる中で、力尽きて撤退していくという事が多い。この場合、残存を目指す中で、債務が増えることになるため、ダメージは、むしろ大きくなります。
そのため、第2の選択肢は「とっとと撤退する」ということになります。いろいろと後ろ髪が惹かれる状況であったとしても、早めに見切り、撤退することが、結果的にはダメージを軽くし、再起のチャンスも高まるとされます。
先の投稿は、そうしたことをイメージしての情報提供でした。
次に、投稿したのは、どのようにコロナ禍によるダメージが拡がるのかという整理と、それに対する基本的な対応策です。
ここでは、コロナ禍によるダメージが、風評->自粛->支出引き締め->投資減という波によって生じていくことを示し、それに対抗するためには、投資減の状況の回避に目標を起き、そのためには絶対量の大きい国内市場を喚起するための「旅行減税」が有効ではないか?という提案をしています。
次に、3月18日には「反撃時期はいつか」という投稿をしています。
今、読み返すと「かなりの大甘」予測ですが、この時点では欧米型COVID-19が国内で拡がっていない状況であったのが、その理由です。いち早く鎖国に踏み切った台湾やニュージーランドは封じ込めに成功したことを考えれば、おそらく、中国型COVID-19のみで終息していれば、この予想に近い形で推移できたのではないかと思っています。
翌日には、この時点での経済損失を試算しています。
2018年対比で、国内市場は85%、訪日市場は40%と試算していました。それでも甚大な被害と当時は思っていましたが、現実は、これを大きく下回ることになります。仮に、日本での「鎖国判断」にオリパラの延期交渉がからんでいたのだとすれば、致命的な遅れでした。
3月20日は、ポスト・コロナとして、旅行活動の変化について指摘をしています。
ここではDX、個人を中心とした連鎖的な経験、半定住といった話をしています。この辺の思索が、現在の「観光のハイブリッド化」へとつながっています。
3月27日、急速な事態悪化を受けて、推計の見直しを行いました。
GWも喪失することを受け国内市場は71%、海外ロックダウンを受け訪日市場も30%と下げています。
実は、個人的には、より厳しい試算も行っていました。が、ある種のアナウンス効果もあるので、少し高めの数値で発表していたという側面があります。
「数値を出す」というのは、いろいろなハレーションも生じることなので、慎重に行うべきだと思っていますが、この時点で産業サイドに、かなり手厚い財政支援を行わないと産業クラスタの維持は難しいと考えており、そうした支援の雰囲気を作り出すための投稿でした。
3月29日には、この推計をベースに、2020年をどう切り抜けていくのかという話をしています。
既に、この時点で「GoToトラベル」は見えていましたが、仮に、このGoToトラベルが有効に機能したとしても、失った需要を取り戻すことは出来ない=大幅な需要減で年度末を迎えるということを指摘した上で、地域レベルで観光産業クラスタを支える取り組みが重要となるであろうことを提言しています。
また、ポスト・コロナとして、衛生対策がこれから重要な要素となるであろうことも指摘をしました。
3月31日には、ポスト・コロナ(ウィズ・コロナ)について深堀りを行っています。
これは、前回の投稿で「衛生対策が重要となる」ことを指摘しましたが、その理由を整理したものです。この時点で、既にコロナは封じ込めは無理で、コロナとダラダラと付き合いながら社会を動かしていく必要があることは見えていました。そういう世界が来るということを共通認識とできれば、衛生対策は必須となることは明らかだろうと思ったのです。
さらに、4月2日には、ここまでの思索を、DMOを視座として整理し直し再編集をしてみました。
ここでの指摘事項は、現時点においても色褪せていないと思います。
4月6日は、国レベルの観光政策について。
3月13日の時点で「国内市場」が、日本の観光リジリエンスを示すのに重要な意味を持つことを示していましたが、それをより一歩進めて、国レベルを視座としてまとめています。
4月11日、DCM(観光地の危機管理/Destination Continues Management)について、通常の危機と、今回の危機(新型コロナ)の違いに注目して整理し、観光産業クラスタの維持が重要であることを指摘しています。
結果的に、国レベルにおいて、雇用調整助成金は拡充され、持続化給付金、無利子融資など財政支援は厚みを持って展開。さらに、一部の地方自治体では交付金を利用した事業者支援も展開され、ここまで大きな倒産は生じていません。
コロナ禍への対応について、政府は何かと非難されていますが、少なくても供給側に対する経済的支援については、機能していると言えるでしょう。
4月15日。ステイホームと合わせて、観光経験のDXについてまとめてみました。
さらに、4月18日にはポスト・コロナに向けたレスポンシブル・ツーリズムの提言を行っています。これは、緊急事態の終了後、観光客にとっても地域住民にとっても安全で安心な観光を再起動させるには、観光客の「検疫フィルター」が非常に重要になると考えたためです。
そして、4月28日には、緊急事態宣言から出口戦略についてまとめました。これには、レスポンシブル・ツーリズム(検疫フィルター)だけでなく、地方部での医療サービス容量の増大も含めていました。
また、5月3日には、その補足を行っています。
率直なところ、各地域において、こうした考え方が議論され、6月から7月にかけての観光再起動のプロセスに組み込まれていれば、現在の混乱の多くは防ぐことが出来たのではないかと思っています。
そして、5月13日には、以下を投稿。
GWを失った観光業界において、夏休みに観光を確実に再起動させることは必須であり、それを展望して行ったものですが…。
これ以降は、状況「様子見」の部分が多い投稿となります。
定量的なロジックではなく、情緒的な部分で世の中は動いていくために、それを配慮した取り組みが必要ということを提示しつつ、コロナ禍への対応の考え方についていくつか投稿しています。
そして、6月28日。
ポスト・コロナにおける観光の形態として「ハイブリッド化」を提言。
夏に向けて前向きに進んでいきたいところでしたが…。7月に入り、東京都で陽性確認者数が爆発。一気に事態は悪化していくことになります。
そこで、以下の2本を投稿。
現実問題として、観光は、感染症対策をした上で、「世論」に対する評判マネジメント(リピテーション・マネジメント)とを行わなければならない状況となっています。観光が経済的にどれだけのインパクトを持っているのか、ということを示すことも重要ですが、経済か疾病かということを直接的に比較する「トロッコ問題」にしてしまうことは避けることが必要となっています。
その辺を「甘く見ていた」結果が、現在の混乱の原因でしょう。
いずれにしても、コロナ禍と観光との関係は、かなりこじれてしまいました。陽性確認者の状況は、いずれ落ち着くでしょうが、「密な交流」と「感染拡大」が裏表の関係であることを考えれば、観光を無条件に肯定することは難しいでしょう。
現時点では、政府からの財政支援が手厚いために、大きな連鎖倒産は生じていません。経済的な生命維持装置が、有効に機能していると言えるでしょう。
ただ、需要が動いていない状況で、供給側への財政支援に過度に依存する状況は、言ってみれば日本全体が公務員化しているような状況にあり、事態を先送りしているに過ぎません。いつまでも財政支援が続くわけではないことを考えれば、こじれてしまった「需要」を解きほぐしていくことに加え、財政支援「後」を念頭においた対応策も考えていくことが必要となります。
そうした課題意識から7月26日に、投稿したのが以下となります。
コロナ禍は、間違いなく観光が直面した史上最凶のクライシスです。
単なる感染症ではなく、様々な社会問題が内包された複合的な課題となっています。これに対処していくことは、なかなかに困難ですが、官民でスクラムを組んで対応していきたいところです。